相続放棄後も管理義務?「現に占有」とは何か解説

相続放棄をすれば、空き家の管理責任もなくなると思っていませんか?

実は、「現に占有」している場合、放棄後も一定の管理義務が残るのです。

「現に占有」とは、相続放棄後も空き家を実際に使用・管理している状態を指します。

放置すると損害賠償請求やトラブルに巻き込まれるリスクがあり、最悪の場合、相続放棄が無効になる可能性もあります。

本記事では、「現に占有」の意味や相続放棄後の義務、管理負担を回避する方法について詳しく解説します。

正しく理解し、リスクを避けるための対策を確認しましょう。

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「現に占有」している時は相続放棄後も空き家管理が必要

相続放棄後の管理責任

相続放棄をすれば、空き家の管理をしなくてもよいと考えがちです。

しかし、「現に占有」している場合は、他の相続人もしくは相続財産清算人が選任されるまでの間、財産の管理義務があります。

(相続の放棄をした者による管理)
第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

引用元:民法|e-Gov法令検索

特に空き家は、放置すると倒壊や損害賠償のリスクがあるため、適切な対応が求められます。

ここでは、相続放棄の基本や「現に占有」の意味、そして、放棄後に残る保存義務について解説します。

相続放棄とは

相続放棄

相続放棄とは、被相続人の財産や負債を一切引き継がない手続きのことを指します。

相続放棄をするためには、相続人は被相続人が亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所への申立てが必要です。

特に空き家を相続すると、固定資産税の負担や維持管理の手間がかかるため、経済的・物理的な負担が大きくなることがあります。

空き家を維持するためにかかる管理費用
そのため、こうしたケースでは相続放棄を選択することで、固定資産税や管理費用などの不要な負担を回避することができるのです。

ただし、相続放棄する場合は、空き家だけでなく、現金、預貯金などのプラスの財産も手放す必要があります。

「現に占有」とは

「現に占有」とは、相続財産に対して事実上の支配を及ぼしている状態を指します。

具体的には、次のようなケースが該当する可能性があります。

  • 対象となる家屋にそのまま住み続けている場合
  • 対象となる家屋に占有者自身の家財や荷物等を保管している場合
  • 対象となる家屋の鍵を保有している場合

参照元:国土交通省

相続放棄する際は、「現に占有」している状態がどういったものかを理解し、管理義務が発生するかどうか確認しましょう。

相続放棄後に残る保存義務とは

前述の通り、相続放棄をしても、「現に占有」している場合は相続財産の価値を損なわないように管理する義務(保存義務)が発生します。

これは、相続財産が次の相続人や清算人へ適切に引き渡されるまでの間、財産を保全するためのものです。

空き家の場合、以下のような管理が必要になります。

  • 屋根や外壁損傷部分の修繕など家屋の維持管理
  • 庭や敷地内の雑草や樹木の管理
  • 害虫・害獣対策
  • 防犯対策

このように、相続放棄をした後も、次の相続人又は相続財産清算人が決まるまでは、上記のような管理をする必要があります。

こうした管理義務を回避するため、空き家は相続放棄せずに、売却するのも一つの選択肢です。

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相続放棄後に空き家管理を怠るとどうなる?

空き家

相続放棄後の空き家の管理義務について正しく理解せず、空き家の管理を怠ると、さまざまなリスクがあります。

空き家の管理を怠った場合のリスクは下記の3つです。

  • 損害賠償請求のリスク
  • トラブルや事件に巻き込まれる可能性
  • 相続放棄が無効になる可能性

以下で詳しく説明します。

損害賠償請求のリスク

相続放棄後に空き家を放置すると、損害賠償を請求される可能性があります。

例えば、建物の老朽化によって屋根や外壁が崩れ、隣家の車や建物を破損させた場合、所有者不在であっても管理義務を怠った責任を問われることがあります。

また、倒壊した空き家の瓦や壁材が歩行者に当たり、怪我をさせてしまった場合も同様です。

日本住宅総合センターによると、空き家が倒壊し、隣家が全壊して3人が死亡した場合の賠償額は、20,860 万円になると試算されています。

空き家と損害賠償

引用元:日本住宅総合センター

こうしたトラブルを避けるために、相続放棄後に管理責任がある場合は、家屋の維持管理が必要です。

しかし、遠方に住んでいたり、忙しかったりと空き家の管理が難しい方もいらっしゃるでしょう。

空き家は相続放棄せず、売却するのがおすすめです。

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トラブルや事件に巻き込まれる可能性

空き家は犯罪に狙われやすい
放置された空き家は、犯罪の温床になりやすく、知らぬ間にトラブルに巻き込まれる可能性があります。

例えば、空き家が不法占拠されていたり、放火や不法投棄の現場となったりすることがあります。

実際に、盗みに入った空き家に放火したとして、大学生が逮捕される事件も発生しています。

参照元:埼玉新聞

もし空き家が犯罪に使われた場合、元の相続人として警察や自治体から問い合わせを受けることがあります。

空き家の放置が原因で、余計な手間やストレスを抱えることになりかねないのです。

相続放棄後の空き家管理負担を回避する方法2つ

相続放棄後に空き家の管理負担を回避するための方法は下記の2つです。

  • 他の相続人に管理を引き継ぐ
  • 相続財産清算人を家庭裁判所に申し立てる

以下で詳しく解説します。

他の相続人に管理を引き継ぐ

相続放棄をしても、自分以外の相続人がいる場合は、その人が管理や処分を引き継ぐことができます。

相続放棄をした人は相続人ではなくなるため、次の順位の相続人に所有権が移ります。

例えば、第一順位の相続人(子ども全員)が相続放棄をした場合、第二順位の相続人(被相続人の親)が相続することになります。

もし、親も放棄した場合は、第三順位の相続人(被相続人の兄弟姉妹)へと引き継がれます。

相続順位

このように、相続放棄をしても、他の相続人が引き継ぐことで空き家の管理を任せることが可能です。

ただし、相続放棄を検討している場合は、他の相続人と事前に相談し、誰が管理を引き継ぐのかを明確にしておくことが重要です。

相続人全員が放棄した場合、次に説明する「相続財産清算人」の手続きを進める必要が出てきます。

相続財産清算人を家庭裁判所に申し立てる

相続放棄をした結果、他に管理を引き継ぐ相続人がいない場合、最終的に「相続財産管理人(清算人)」を家庭裁判所に選任してもらう手続きを行うことになります。

これは、相続人不在となった財産を適切に管理・清算するための制度です。

相続財産清算人は、空き家の管理や処分を行う役割を担います。

相続財産清算人の申立ては、相続放棄をした相続人や債権者、利害関係者が行うことができます。

相続財産清算人の選任方法

相続財産清算人の選任の流れは、次の通りです。

  1. 必要書類の準備
  2. 家庭裁判所への申し立て
  3. 審判

相続財産清算人は、利害関係者(被相続人の債権者,特定遺贈を受けた者,特別縁故者など)の申し立てに基づき、家庭裁判所によって選任されます。

申し立ては、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行う必要があります。

手続きは比較的シンプルで、「申立書」に必要事項を記入し、必要書類をそえて提出すれば完了します。

申し立てに必要な書類は以下の通りです。

  • 相続財産清算人選任の申立書
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の兄弟姉妹で死亡している方がいる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  • 代襲者としてのおいめいで死亡している方がいる場合,そのおい又はめいの死亡の記載がある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
  • 財産を証する資料(不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書),預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等)
  • 利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書),金銭消費貸借契約書写し等)
  • 相続財産清算人の候補者がある場合にはその住民票又は戸籍附票

参照元:裁判所|相続財産清算人の選任

なお、申し立ては弁護士や司法書士に依頼することも可能ですが、ご自身で手続きを進めることもできます。

申し立てに必要な費用は下記の通りです。

  • 収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手
  • 官報公告料5,075円

手順の確認や必要書類の準備を行い、手続きを円滑に進めましょう。

相続財産清算人の責任と報酬

空き家を含む相続財産の清算人は、財産を適切に管理し、必要に応じて売却や解体を行い、債務を清算する責任を負います。

相続財産清算人の報酬は、基本的に被相続人の相続財産から支払われます。

ただし、相続財産が少なく、相続財産管理人の報酬を相続財産から支払うことが難しい場合、申し立てを行う人があらかじめ家庭裁判所に報酬相当額を納め、それが相続財産清算人の報酬として充てられることがあります。

報酬の相場は、弁護士や司法書士といった専門家が清算人に選ばれた場合、月額で1万円から5万円程度が一般的です。

参照元:グリーン司法書士OnLine

このように、相続放棄して相続財産清算人を立てるには、申し立ての手間や、費用がかかります。

こうした費用を発生させないために、空き家は相続放棄せず、売却するのがおすすめです。

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まとめ

この記事では、相続放棄をしても「現に占有」している場合には空き家の管理義務が残ることについて解説しました。

相続放棄をすればすべての責任から解放されるわけではなく、適切に管理しないと損害賠償請求やトラブルに巻き込まれるリスクが生じます。

最悪の場合、相続放棄が無効になる可能性もあるため注意が必要です。

負担を回避するためには、他の相続人に管理を引き継ぐか、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる方法があります。

相続放棄後の空き家管理を放置せず、適切な対応を取ることが大切です。

この記事の監修者

株式会社AlbaLink 代表取締役 河田 憲二

株式会社AlbaLink社長の河田憲二です。弊社は空き家やなど訳あり物件の買取再販を行う不動産業者です。弊社が運営しているサービスサイトである「訳あり物件買取プロ」の運営者も務めています。同社は東京証券取引所東京プロマーケット市場にも上場している不動産会社になります。

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