空家等対策特別措置法とは?
空家等対策特別措置法とは、放置された空き家による倒壊や事故、犯罪などのリスクを防ぐため、自治体が措置を取れるようにした法律です。
通称「空家法」と呼ばれており、2015年に施行されました。
この章では、法律の基本的な仕組み・2023年改正でのポイント・国が示す数値目標について、順を追って見ていきます。
法律の内容と権限
空家等対策特別措置法は、近隣に危険や迷惑を及ぼす空き家に自治体が対策を進められるようにした法律です。
具体的には、管理状態が著しく不適切な空き家を「特定空き家」として指定し、必要な措置を講じます。
詳細は、「行政措置の5ステップ」で解説しますが、特定空き家に指定されると行政の対応は段階を踏むごとに厳しさを増していきます。
つまり、空家法は空き家の所有者に「適切な管理」を求めつつ、いざというときには行政が強制的に介入できる仕組みを持つ法律です。
この法律は年々改正が重ねられ、行政が取れる措置の幅も少しずつ広がってきています。
2023年法改正の3つのポイント
2015年に施行された「空家等対策特別措置法」には、下記のような課題が残されていました。
- 空き家の総数は増え続け、当初期待されていたほどには減少しなかった
- 行政代執行までの手続きに時間を要し、その間に倒壊の危険性が増すケースもあった
これらを踏まえて2023年6月に改正法が成立し、同年12月に施行されています。
「改正空家等対策特別措置法」における主なポイントは、以下の3点です。
空き家対策特別措置法の改正については、以下の記事で詳しく解説しています。

空き家の利活用を促進
空き家が多く集まる中心市街地や地域再生拠点といったエリアについて、市区町村が「空家等活用促進区域」として指定できる制度が新設されました。
区域に指定されると、市区町村は「活用指針」を策定し、それに基づいて区域内の空き家の活用を進めます。
たとえば、所有者に対して「地域活性化のため、空き家を住民の交流スペースとして活用してほしい」といった要請ができます。
「適切に管理してください」という要請から、「このように使ってほしい」という具体的な働きかけへ変わった点がポイントです。
また、建築基準法や都市計画法の制約により、建て替えや利活用が困難な空き家が数多く存在していました。
今回の改正により、市区町村が定める指針に沿った用途であれば、特例として許可・規制緩和を受けられるようになっています。
空き家の管理体制を強化
2023年の法改正では、「管理不全空き家」という新しい区分が設けられました。
これは、今すぐ倒壊するような危険性はないものの、放置すれば将来「特定空き家」となりうる物件を指す区分です。
詳細は「管理不全空き家」で解説しますが、所有者に対して助言・指導・勧告までの措置を進められます。
また、2024年4月からは相続で不動産を引き継いだ人に対し、3年以内に相続登記を行うことが義務付けられました。
正当な理由なく怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
法改正や義務化が重なり、空き家を放置すること自体が税金や過料のリスクを招きかねない状況になっています。
所有者不明空き家のリスクと、相続登記義務化については、以下の記事で詳しく解説しています。


危険な空き家への迅速な対処
2023年の法改正によって、市区町村長には新たに「報告徴収権」が付与されました。
報告徴収権とは、空き家の所有者や関係者に対して状況報告を求められる権限です。
参照元:e-Gov法令検索「空家等対策特別措置法第9条2項」
この権限により、行政は空き家の実態をより早く正確に把握できるようになりました。
また、緊急時の代執行制度を創設したことで、緊急度の高い特定空き家については一部手続き等を省略して代執行が可能になりました。
これにより、近隣住民の安全を迅速に確保できる体制が整っています。
空き家が行政措置の対象となるまでのスピードは、今後さらに速まっていくと見込まれます。
国が定めた3つの数値目標
空き家の種類の中でも注視されているのが、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」です。
いわゆる「放置空き家」と呼ばれるこのタイプは、1993年の約149万戸から2023年には385万戸へと、30年間で約2.6倍に増加してきました。
2030年に470万戸まで達すると予測されており、この増加傾向に歯止めをかけるべく、国は改正法において以下の3つの目標を掲げています。
- 空家等活用促進区域の指定数:施行から5年間で100区域
- 空家等管理活用支援法人の認定数:施行から5年間で120法人
- 管理や除却等が実施された管理不全空家・特定空家の数:施行から5年間で15万物件
このように、国は2028年末を一つの目安として、空き家を「活用できるなら活かし、難しいなら早めに手放す」方向へ社会を導こうとしています。
空き家の種類については、以下の記事で詳しく解説しています。

空き家の定義
国土交通省の定義によれば、空き家とは「おおむね1年以上、人の出入りや使用がない建物」とされています。
具体的には、電気・ガス・水道の使用状況やそれらが使用可能な状態にあるかどうかが判断基準の一つになるとされています。
そのなかでも、管理の面で問題があると注視されているのが以下2つの空き家です。
なお、京都市では「空き家税」の導入が予定されています。
全国初となる自治体独自の新税で、市街化区域内の空き家や別荘を対象に、既存の固定資産税等に上乗せする形で課税する仕組みです。
準備の遅れから課税開始時期は延期となっており、2030年度以降のスタートが見込まれています。
このことから、「適正に管理されている空き家」に関しても、対応がより厳しくなっていくことが予想されます。
空き家税については、以下の記事で詳しく解説しています。

管理不全空き家
管理不全空き家とは、適切に管理されず、放置すれば「特定空き家」になりかねない建物です。
たとえば、以下のような状態は管理不全空き家に指定される可能性があります。
- 外壁や窓の一部に腐食や破損が見られ、落下の恐れがある
- 除草が行われておらず、害虫等の発生源とな可能性がある
- 不用品やごみが敷地に散乱したまま放置されている
管理不全空き家に指定されると、指導から始まり、改善がなければ勧告・特定空き家の指定となっていきます。
勧告を受けると後述する「宅用地の特例」が外れ、翌年以降の固定資産税が最大6倍まで増額されます。
ただし、この段階では行政代執行は行われません。
行政代執行の対象となるのは、あくまで次の段階の「特定空き家」に移行してからです。
特定空き家
特定空き家とは、管理不全空き家よりもさらに深刻で緊急性が高い状態にある空き家を指します。
具体的には、以下のような状態だと「特定空き家」に指定される可能性が高くなります。
- 倒壊など保安上危険な恐れがある
- 著しく衛生上有害な恐れがある
- 管理不足で景観を著しく損なっている
- その他、周辺の生活環境保全上放置が不適切
指定された後は、自治体からの指導・勧告にとどまらず、命令や公表といった、より段階的で踏み込んだ措置が講じられていきます。
空き家に対する行政措置の5ステップ
空き家をそのまま放置していると行政から段階を踏んだ措置が講じられ、最終的には強制的な解体に至るケースもあります。
ここでは、空き家に対して行われる行政措置の流れを、5つのステップに分けてご紹介します。
助言
助言とは、市区町村から「このままだと危険なので改善してください」と伝えられる、もっとも軽度な働きかけです。
法的な違反行為ではないため、この段階では強制力はなく、あくまで「アドバイス」や「お願い」に近い措置といえます。
指導
指導は、助言と同じく空家法第22条第1項に基づく行政指導で助言よりも一歩踏み込んだ働きかけです。
単なる注意喚起ではなく、「どこが」「どんな状態で」「何をすべきか」を具体的に特定して書面または口頭で伝えられます。
この段階でもまだ罰則はありませんが、対応しないまま放置すると、次の「勧告」へと進んでしまいます。
勧告
助言・指導を行っても状態が改善されない場合に、市区町村から正式に発せられるのが「勧告」です。
勧告では、相当の猶予期限を設けた上で、除却・修繕・立木竹の伐採など、必要な措置をとるよう求められます。
勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が適用対象外となるため、税額が大きく増加する可能性があります。
固定資産税が6倍になる
住宅が建っている土地には、「住宅用地の特例」という固定資産税の軽減制度が設けられています。
この特例により、居住用の家屋が建つ土地は本来よりも税額が大幅に抑えられています。
具体的には、200㎡以下の部分は小規模住宅用地として課税標準が1/6に、200㎡を超える部分は1/3に軽減されています。
しかし、管理不全空き家・特定空き家として勧告を受けると、住宅用地の特例が適用対象から除外されてしまいます。
つまり、翌年以降に土地の固定資産税が最大6倍まで跳ね上がる恐れがあるのです。
参照元:e-Gov法令検索「地方税法349条の3の2第1項」
つまり、金銭的な負担を避けるためには、「助言・指導」の段階のうちに改善を済ませておく必要があります。
命令
勧告を受けた者が正当な理由がなく、なおかつ市町村長が必要と判断した場合には、「命令」が出されます。
法的な強制力があり、発令の前には所有者に対して事前通知が行われ、意見書の提出・意見聴取の機会が設けられます。
それでもなお改善されない場合に、正式に命令が下されます。
この命令に違反すると、50万円以下の過料が科される場合があります。
行政代執行
行政代執行とは、命令を受けても改善されない場合に、市区町村が所有者に代わって空き家を強制的に解体・撤去できる制度です。
工事に要した費用は後日、所有者へ請求されます。
一般的に、30坪程度の木造住宅であれば、通常の解体費用の相場は90万〜150万円ほどとされています。
しかし、行政代執行による解体では執行に至るまで要した諸経費が加わるため、通常の工事よりも割高になる傾向があります。
実際に、北海道旭川市で行われた行政代執行は木造2階建てで、除却費用約410万円が請求されています。
支払いに応じない場合は、通常の税金の滞納処分と同様の手続きで、財産の差し押さえ等による強制徴収が行われる可能性があります。
重い金銭的負担を負わないためにも、早い段階で空き家の管理状態を改善しておくことが重要です。
空き家が行政代執行については、以下の記事で詳しく解説しています。

空き家の行政措置を回避する4つの方法
前述のように、特定空き家に指定され、助言・指導の段階を過ぎると金銭的負担が生じ始めます。
今後は行政代執行に至るまでのスピードが速まると見込まれるため、何よりも「予防」が重要になります。
この章では、空き家の行政措置を回避する以下4つの方法をご紹介します。
自分で管理する
空き家をそのまま所有し続けるなら、シンプルな対策は自分で管理することです。
行政が「特定空き家」に指定するのは、倒壊の恐れや景観の悪化といった状態が見られる場合に限られます。
裏を返せば、継続的に管理していれば、基本的に行政措置の対象になることはありません。
月1回ほどのペースで空き家に足を運び、換気・清掃・草刈りを行いつつ、必要であれば修繕も加えていけば、十分な予防策になるでしょう。
とはいえ、遠方に住んでいる方や仕事で忙しい方にとっては、この頻度で通い続けることは現実的ではありません。
そうした方は、次に紹介する管理代行サービスの利用を検討してみることをおすすめします。
管理サービスを使うのもOK
空き家管理サービスを利用すれば、専門の業者が建物の点検や清掃、庭の手入れなどを定期的に代行してくれます。
多くのサービスでは「巡回→写真撮影→報告書作成→メールまたはWeb上での共有」といった流れで現地の状況を報告されます。
進捗をタイムリーに把握できるため、行政措置の対象となるような状態に陥っていないか確認でき、安心につながるでしょう。
料金相場は月額5,000円〜1万円程度で、訪問の頻度や作業内容によって価格は変動します。
自分で管理する時間を確保できない方は、管理代行サービスで空き家の状態を良好に保つのも一つの手段です。
売却する
結論からいうと、行政措置を回避する確実な方法は「空き家の売却」です。
所有者でなくなれば、当然その建物に対する管理責任も消滅するため、行政措置とは無関係になります。
売却の方法には「仲介」と「買取」の2種類があり、それぞれ次のような特徴があります。

- 仲介
- 不動産会社が買主を探す仕組み。空き家の需要が見込める場合は、売却価格は市場相場に近い水準になりやすい
- 買取
- 不動産会社が直接買い取る仕組み。価格は仲介より安くなりやすい一方、需要が見込めない物件でも高確率で売却できる
まとめると、空き家を少しでも高く売りたいなら「仲介」、迅速かつ手軽に売りたいなら「買取」が適しています。
「買取」だと比較的早く手放せる
スピード重視で空き家を売却したい方には、「買取」が適しています。
買取は不動産会社が直接購入するため、買主を探す手間がなく、契約から数週間〜1ヶ月ほどで現金化できるケースが一般的です。
また、不動産買取業者が自社で空き家再生をする前提で買い取るので、仲介で買い手が付かない物件でも売却しやすい点も特徴です。
一方で、再生コストがかかることから、買取価格は仲介より低くなる傾向があり、価格面では仲介に劣る傾向にあります。
行政措置のリスクを一刻も早く解消したい方は、価格よりもスピードを優先できる買取を検討してみるとよいでしょう。
弊社AlbaLink(アルバリンク)も、空き家に強い専門の買取業者です。
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解体する
老朽化が進み、活用の見込みがない空き家であれば、解体してしまうのも選択肢の一つです。
倒壊等の危険がある建物自体がなくなるため、「特定空き家」に関するリスクからは解放されます。
ただし、建物を解体しても土地に対する管理責任は残るため、そのまま放置するのは避けましょう。
市区町村単位では「空き地」に関する独自の罰則規定を設けているケースがあります。
たとえば、三重県名張市の条例では雑草の除去を命じ、従わない場合は行政代執行によりその費用を所有者から徴収することが定められています。
参照元:国土交通省「空き地の適正管理及び利活用に関するガイドライン」
したがって、解体後は空き地のまま放置せず、「土地を売却する」「新しい家を建てる」のいずれかの行動を早めに取ることをおすすめします。
土地を売却する
解体後に更地の状態で土地だけを売却するという方法は、比較的需要を見込みやすい選択肢です。
古い建物が建ったままだと購入をためらう人でも、更地であれば活用イメージを描きやすく、前向きに検討する傾向にあります。
とくに、住宅街や駅近のエリアにある土地であれば、建て替え用地や駐車場用地としての需要も期待できます。
初期費用として解体費用はかかりますが、古家付きのまま売り出すよりも早期に成約へつながりやすくなるでしょう。
新しい家を建てる
その土地に愛着があり、通勤や通学の利便性も良いのであれば、解体後に新しい家を建てて自分や家族が住むのも手段です。
自分自身がそこに住めば、日々の生活を送る中で自然と管理が行き届くので、実はもっとも理想的な解決策といえます。
老朽化した建物を取り壊して建て替えれば、耐震性や断熱性に優れている上に理想の間取りの住まいを手に入れられるでしょう。
ただし、解体費用に加えて建築費用も発生するため、初期投資はある程度まとまった金額になる点には留意が必要です。
その土地に愛着があり、なおかつ実用面でも利便性が高い場合に適した方法だといえます。
改修する
建物自体に大きな損傷等がなければ、リフォームして活用する方法もおすすめです。
解体費用がかからない上に、建物を使い続けることで自然と管理の目も行き届きやすくなります。
改修後の活用方法としては、以下3つの選択肢があります。
ただし、留意すべきは、2025年4月に施行された改正建築基準法の影響です。
この改正により、木造2階建てなどに適用されていた「4号特例」が縮小され、大規模なリフォームには原則、建築確認申請が必要になりました。
接道義務を満たさない「再建築不可物件」はそもそも建築確認を受けられないため、事実上大規模リフォームができなくなるケースも出ています。
リフォームでどこまでの範囲の工事が可能かを確認した上で、計画を進めることをおすすめします。
2025年の建築基準法改正については、以下の記事で詳しく解説しています。

賃貸に出す
改修後の活用方法としてもっとも一般的なのが、賃貸物件として貸し出す方法です。
入居者が決まれば毎月の家賃収入が得られるだけでなく、人が住み続けることによって管理の手間も大幅に軽減されます。
築古物件であっても、水回り設備の交換・和室から洋室への変更といったリフォームを施すことで、入居希望者を見つけやすくなります。
ただし、住宅需要がないエリアに所在する空き家の場合、空室期間が長引き、かえって管理状態が悪化してしまう恐れがあります。
事前にそのエリアに需要があるかどうかを見極めて行動することで、管理不全や費用倒れを予防しやすくなるでしょう。
サブスク住宅にする
近年注目されているのが、定額制で住み放題になる「サブスク住宅」として活用する方法です。
サブスク住宅とは、月額料金を支払うことで運営会社が管理する全国の物件を自由に利用できるサービスです。
短期利用や多拠点生活を希望する若年層やリモートワーカーからの需要が高まっており、通常の賃貸よりも柔軟な形で空き家を活用できます。
たとえば、株式会社クロスハウスは、東京・大阪など大都市とその近郊をターゲットに、戸建て等のサブスク住宅を約460物件展開しています。
参照元:公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会「REAL PARTNER」
ただし、サブスク住宅は、都市部や交通利便性の高いエリアでの需要が中心となる傾向があります。
多くの運営会社は無料相談を受け付けているので、空き家の所在地が対象か確認してみるとよいでしょう。
セーフティネット住宅に登録する
社会貢献をしながら空き家を活用したい場合は、セーフティネット住宅への登録も選択肢です。
セーフティネット住宅とは、高齢者・低所得者・子育て世帯など、住宅の確保が難しい方を受け入れる賃貸住宅です。
登録した物件は自治体のサイトなどで公開されるほか、改修費用の補助等の支援制度を受けられる場合もあります。
登録に関する相談は無料です。
ただし、登録申請そのものの手数料についても無料としている自治体が多い一方で、取り扱いが異なる地域もあります。
都道府県・市町村によって独自の基準が設けられている場合があるので、詳細は市区町村の窓口へ問い合わせましょう。
まとめ
空き家を放置していると、助言・指導、勧告・命令と段階を踏み、最終的には行政代執行に発展するケースもあります。
記事内でもお伝えしたとおり、法改正によって空き家に対する規制は一段と厳しくなっています。
ある日突然、多額の費用負担を求められる事態に陥らないためにも、空き家対策は早めに取り組みましょう。
本記事では、そうした事態を防ぐ方法として、以下4つの方法をご紹介しました。
とはいえ、土地・建物を所有し続ける以上、管理責任から完全に解放されることはありません。
ご自身での管理・改修に限界を感じる場合は、空き家買取業者への売却も一つの解決策です。
空き家買取業者であれば、管理が行き届かず老朽化が進んだ状態でも、現状のまま買い取ってもらえます。
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