「空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除」とは?
親などが亡くなり相続した家を空き家を売却したとき、その売却益から最大3,000万円を控除できる制度があります。
それが、「空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除」です。
正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」で、通称「空き家特例」と呼ばれます。
被相続人(故人)が一人暮らしをしていた住宅を相続人が売却する際に使える特例で、空き家増加への対策として2016年度に創設されました。
空き家特例を利用し、譲渡所得が3,000万円以内になれば、納税額は0円となります。
空き家の3,000万円特別控除を利用する5つの条件
空き家の3,000万円特別控除を受けるには、次の5つの条件をすべて満たす必要があります。
被相続人が一人暮らしだった
空き家特例が利用できるのは、相続開始の直前に被相続人が一人で暮らしていた場合です。
この制度は、相続をきっかけに空き家が増えるのを防ぐために設けられています。
被相続人と同居していた家族がいた場合は相続後に空き家となる可能性が低いため、特例を利用できません。
なお、被相続人が生前に老人ホーム等に入所していたケースでは、一定の条件を満たせば特例の対象となります。
老人ホーム等への入居していた場合も適用対象
被相続人が生前、老人ホーム等に入居していた場合でも一定の条件を満たせば特例が利用できます。
高齢化の進行に伴い、自宅ではなく老人ホーム等で最期を迎える方が増えてきたことを受け、平成31年度に税制改正が行われました。
老人ホーム等に入所しながら適用を受けるには、次の条件を満たす必要があります。
- 「特定事由」に該当している
- 要相続開始の直前において要介護認定または要支援認定を受けており、老人ホーム等に入居していたこと
- 自宅のまま維持している
- 施設に入った後、亡くなるまでの間、その自宅を賃貸に出したり、被相続人以外の人を住まわせたりしていないこと
参照元:国税庁「No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋」
本来は被相続人が一人暮らしだったことが要件となりますが、上記のようなケースに該当する場合は特例の適用が認められます。
昭和56年5月31日以前に建築された建物である
特例の対象になる空き家は、昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた建物に限定されています。
この日付は、建築基準法上の耐震基準が大幅に見直された「新耐震基準」の施行日を基準にしています。
旧耐震は、震度5強程度の中規模地震で建物が倒壊・崩壊しないことを目安とした、昭和56年5月31日以前の基準。新耐震は、震度5強程度の中規模地震ではほとんど損傷が生じず、震度6強〜7程度の大規模地震でも倒壊・崩壊しないことを目安とした、昭和56年6月1日以降の基準
空き家特例は、「倒壊の危険がある老朽化した空き家を減らす」という政策目的が背景にあるといわれています。
そのため、倒壊の危険が高い旧耐震基準が特例の対象となり、一定の耐震性能がある新耐震基準の建物は対象外となっているのです。
なお、マンション(区分所有建物)については、建築年に関係なく特例が利用できません。
相続から譲渡まで空き家である
相続発生から実際に売却するまでの期間は、空き家のまま維持をしていなくてはなりません。
期間中に賃貸として貸し出したり、事務所などの用途で使用したりすると特例が適用できなくなります。
「空き家にしておくのはもったいない」と感じるかもしれませんが、特例を使って売却したい場合は、賃貸に出さないようにしましょう。
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買主が耐震改修等を行った
相続した空き家が旧耐震基準の場合、売却時に耐震改修工事または解体工事が必要です。
以前は売主である相続人自身が、買主に引き渡すまでの間に工事を完了させておく必要がありました。
しかし、令和5年度の税制改正により、売却後に買主が工事を実施するケースも特例の適用対象となっています。
その場合は、売却した年の翌年2月15日までに工事を完了させることが条件です。
対応するのが売主・買主のどちらでも特例の対象となるため、耐震性の低い建物が放置されにくい仕組みになっているといえます。
譲渡対価が1億円以下である
建物と土地を合わせた売却価格が1億円を超える場合、空き家特例の適用外となります。
金額の上限が設けられているのは、高額な不動産の売買にまで税制優遇の対象を広げないようにするためだと考えられます。
なお、売却を複数回に分けて行った場合でも、一定の期間内(後述)での合計額で1億円を超えるなら特例は利用できません。
共同相続人が違う時期に譲渡した場合は?
複数の相続人が別々のタイミングで空き家を売却した場合でも、期間内の合計額が1億円を超える場合は特例の対象外です。
対象となる期間は、最初に空き家の共有持分を売却した日から起算して3年後の12月31日までです。
たとえば、兄弟2人が空き家の共同相続人だったとします。
兄が先に自分の持分を7,000万円で売却した場合でも、期間内に弟が残りの持分を4,000万円で売却すれば合計額は1億1,000万円とみなされます。
この場合、兄が当時控除を適用できていても、さかのぼって無効となり、売却日から4ヶ月以内に修正申告・追加納税が必要になります。
贈与や低額譲渡があった場合は?
空き家の売却前後に、贈与や著しく低い価格での譲渡があった場合、その金額も1億円の判定対象に含まれます。
対象となるのは、相続が発生した日から売却した日から起算して3年後の12月31日までの期間です。
たとえば、空き家の持分(評価額3,000万円)を家族へ贈与し、残った持分を8,000万円で売却したなら、期間内は1億1,000万円とみなされます。
実際に受け取った売却代金が8,000万円であっても、特例の適用外となります。
空き家の3,000万円特別控除が利用できるかはチェックシートでわかる
空き家特例が使えるかどうかは、国税庁のチェックシートを照らし合わせると簡単に判断できます。
主な適用条件のポイントは、以下のとおりです。
- 被相続人が、亡くなる直前まで一人暮らしをしていた住宅であること
- 建築時期が昭和56年5月31日以前であること
- マンションのような区分所有建物ではないこと
- 相続発生から売却までの間、賃貸・事業利用のいずれもされていないこと
- 相続開始の日から3年後の12月31日までに売却すること
- 売却価格が1億円以下であること
なお、取引相手についても細かい条件が定められており、親族など「特別な関係がある人」への売却は対象外となります。
質問ごとに「はい」「いいえ」で回答を進めていくと最終的に特例の適用可否が判定できる仕組みになっているので、ぜひご確認ください。
参照元:国税庁「相続した空き家を売却した場合の特例チェックシート」
空き家の3,000万円控除の適用要件と手続きの詳細については、以下の記事で解説しています。

空き家の3,000万円特別控除の利用する際の3つの注意点
後から「やっぱり控除が使えなかった」とならないために、事前に押さえておきたい注意点があります。
空き家の3,000万円特別控除を利用する際は、以下の3つに気をつけましょう。
倉庫や店舗は特例の対象外
空き家特例の対象は「被相続人の生活していた家屋」です。
たとえ外観が住宅であっても、倉庫や店舗として使われていた家屋は特例の対象外となります。
建物を事前取得している場合は特例の対象外
空き家特例が利用できるのは、あくまで相続または遺贈で取得した空き家です。
遺贈とは、被相続人が遺言によって生前お世話になった個人や団体に財産を無償で譲り渡すことを指します。
そのため、生前贈与などで相続前にすでに空き家を取得していた場合は、この特別控除の対象にはなりません。
特例の利用には「確定申告」が必要
相続した空き家を売却した翌年には、「確定申告」の手続きを行う必要があります。
確定申告とは1年間に得た収入や利益を自分でまとめて税務署へ報告する制度で、空き家の売却益も含まれます。
特例は自動的に適用されないため、計算の結果、納める税金が0円だったとしても、申告は必要です。
空き家の3,000万円特別控除の3つの手続き
空き家の3,000万円特別控除の手続きは、以下の3ステップで完了します。
必要書類を用意する
まずは、確定申告に必要な書類を用意します。
必要書類と取得先を、以下にまとめました。
| 書類名 | 取得先 |
|---|---|
| 譲渡所得の内訳書 | 国税庁の確定申告書等作成コーナー |
| 登記事項証明書 | 法務局 |
| 被相続人居住用家屋等確認書 | 市区町村役場 |
| 売買契約書の写し・領収書等 | 自宅等の保管場所 |
| 家屋の取壊し証明書類(取り壊した場合) | 解体業者 |
| 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書(耐震リフォームをした場合) | 建築士事務所・住宅性能評価機関等 |
譲渡所得を計算する
必要書類が揃ったら、譲渡所得の金額を計算します。
譲渡所得とは、簡単にいうと不動産を売却したことで得られる利益です。
空き家特例を適用する場合、譲渡所得は次の計算式で求められます。
売却価格から、物件の取得にかかった費用(取得費)と、売却時にかかった費用(譲渡費用)を差し引きます。
その金額に最大3,000万円の特別控除を引いた金額が「譲渡所得」です。
算出した譲渡所得に、所有していた期間に応じた税率をかけることで納めるべき譲渡所得税の額が決まります。
| 譲渡所得の区分 | 所有期間 | 税率 |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以内 | 39.63% |
| 長期譲渡所得 | 5年以上 | 20.315% |
なお、譲渡所得を算出する段階で0円だった場合、確定申告自体は必要ですが税金を納める必要はありません。
確定申告書類を作成して税務署へ提出する
必要書類がそろったら、確定申告書を作成します。
国税庁が提供している「確定申告書等作成コーナー」を利用すると画面の案内に沿って入力するだけで、以下の3つの書類を作成できます。
- 確定申告書の第一表・第二表
- 分離課税用の第三表
- 譲渡所得の内訳書
空き家を売却した年の翌年2月16日から3月15日までの間に、税務署の窓口、もしくはe-Taxで提出します。
なお、「一人で書類を作成するのは不安」という方は、以下のような相談窓口を活用するのも一つの方法です。
- 最寄りの税務署
- 確定申告の時期になると税務署内に相談コーナーが設けられるので、職員に直接質問しながら書類作成ができる
- 国税庁の電話相談センター
- 電話でオペレーターに、入力操作の手順や制度に関する疑問を相談できる
- 税理士
- 「書類作成そのものを任せたい」「特例適用の可否を知りたい」など個別の判断が必要な内容を相談できる。手続きの大部分を任せられる反面、費用が10〜20万円程度かかる
空き家の3,000万円特別控除の利用に関する4つの疑問
空き家の3,000万円特別控除には、併用や適用に関する細かな規定が存在します。
この章では、空き家の3,000万円特別控除の利用に関する以下4つの疑問について解説します。
空き家が被相続人と「共有」の場合はどうなる?
被相続人が生前、家を単独ではなく相続人と共同で所有していたケースもあります。
たとえば親子で家を半分ずつ共有していた場合は、「親名義だった持分」のみ、特例の対象となります。
相続税の「取得費加算の特例」と併用できる?
空き家特例と取得費加算の特例は併用できません。
取得費加算の特例とは、相続税を納めた方が、その相続税の一部を売却した不動産の取得費として上乗せできる仕組みです。
どちらか一方しか選べない「選択適用」であるため、自分にとって有利なほうを選択する形となります。
なお、取得費加算の特例では相続税額のうち、売却した財産の割合に応じた部分しか取得費に加算できません。
そのため、「相続税が高額」といったケースを除き、一般的には「空き家特例」を選択したほうが控除のメリットが大きいといわれています。
取得費加算特例については、以下の記事で詳しく解説しています。

相続税の「小規模宅地等の特例」と併用できる?
基本的には併用が難しい特例ですが、特定の条件を満たす場合に限り併用できる可能性があります。
小規模宅地等の特例とは、相続税の計算において土地の評価額を最大80%まで引き下げられる制度です。
それぞれの特例の対象を整理すると、次のようになります。
- 空き家特例
- 被相続人が一人暮らしをしていた住宅で、相続をきっかけに空き家となったものが対象
- 小規模宅地等の特例
- 原則として、被相続人と生活を共にしていた親族が、その後も生活の場を維持するために居住を続ける人が対象
このように、特例の対象が異なるので通常は同時に適用できませんが、以下の2つのケースでは例外的に併用が認められます。
- 被相続人と別居していた配偶者が相続したケース
- 相続人自身が持ち家を所有していないケース
3000万円特別控除と併用できない特例はある?
租税特別措置法上の特例は、同じ不動産について二重に適用できないのが原則です。
空き家特例の場合、相続税の取得費加算の特例・同一の不動産に対する他の譲渡所得の特別控除は併用ができません。
ただし、控除の対象となる不動産が異なれば、併用は可能です。
たとえば、相続で取得した空き家と、自分が住んでいた自宅を同じ年に別々に売却したケースでは、それぞれの物件に異なる特例を適用できます。
この場合、自宅の売却には「居住用財産の3,000万円控除」、空き家の売却には「空き家に係る3,000万円控除」をそれぞれ利用可能です。
注意点としては、同じ年のうちに両方の特例が利用できても、控除額は合算して上限3,000万円になるなどの条件があることです。
こうした特例を無駄なく活用し、手元に残る金額を最大化するためには、税理士など専門家へ相談することも有効な選択肢の一つです。
まとめ
空き家の3,000万円特別控除を利用するためには、次の5つの条件をすべて満たす必要があります。
とはいえ、実際には他の特例との併用や贈与の有無など、状況によって控除が受けられないケースもあります。
数千万円単位の控除が受けられるかどうかで、手取り額が大きく変わるのはいうまでもありません。
制度を賢く利用してお得に手放すためにも、空き家特例に精通した専門家へ相談するのがおすすめです。
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