将来実家を手放す可能性がある人は83.8%
全国の男女500人に、将来実家を手放す可能性があるかを聞いたところ、「ある」と答えた人が83.8%にのぼりました。
背景にある理由としては、「実家や親元を離れて生活する人が多い」「実家を継ぐべきという価値観が薄れている」などが考えられます。
また空き家問題が深刻化してメディアなどでも取り上げられているため、「空き家を保有するリスク」を認識している人が増えていることも理由のひとつだと推測できます。
実家を手放す決め手は「住む人がいない」
「実家を手放す決め手は何か?」と聞いたところ、1位は「住む人がいない(30.6%)」でした。
2位「維持費が負担になる(27.8%)」、3位「遠方に住んでいる(18.2%)」と答えた人も多くなっています。
実家を手放す決め手になるのは、「管理の難しさ」と「経済的負担」の2パターンだとわかりました。
例えば自分を含め親戚がみんな遠方にいて誰も住む人がいないと、実家の維持管理が難しくなります。
また築年数が古かったり立地が悪かったりすると「住もう」という気になりにくいうえ、資産価値が低くなり活用しにくく、維持管理費用だけがかかるという状況にもなりかねません。
1位 住む人がいない
- 住む人がいなくなったら。つまり両親が亡くなったら(30代 女性)
- 兄が住まなければ売却する予定です(40代 男性)
- 今住んでいる弟になにかあって、実家に住む人がいなくなった場合(60代以上 男性)
1位は「住む人がいない」です。
住む人がいなくなる理由は、「実家に住んでいた親や兄弟が亡くなる」「施設入居などで実家を離れる」などです。
住む人がいなくなって空き家になると、家の劣化スピードは速まる傾向があります。
そのため住む人がいなければ、ボロボロになる前に手放したほうがいいと考える人が多くなるのも当然です。
2位 維持費が負担になる
- 固定資産税や修繕費などのお金に負担を感じたとき。家庭状況により、マンションへ引っ越した方が生活負担が軽減すると判断したとき(30代 男性)
- 固定資産税や修繕費など、実家の維持費を捻出するのが難しいため(40代 女性)
- 実家がビルなので、建て替え時期が来てしまったら厳しいかなと思います。相続税を払うのだって厳しいのに、そんな莫大なお金は出せません(50代 女性)
2位は「維持費が負担になる」でした。
実家を保有して維持するためには、「固定資産税などの税金」「修繕費・リフォーム代」「建て替え費用」などがかかります。
分譲マンションであれば「修繕積立金」「管理費」なども徴収されていきます。
上記のような経済的負担が大きくなり、実家を持ち続けることが困難になった場合に、手放す決断をする人も多いとわかりました。
3位 遠方に住んでいる
- 遠方に住んでいるからです。でも他に兄妹もいるので、自己判断はできません(30代 女性)
- 遠方で結婚をするから。なかなか帰ることもできないし、保有したままだと余計なお金もかかるので(30代 女性)
- 航空機を使わないと行けないほど、遠方に住んでいる(50代 女性)
3位は「遠方に住んでいる」です。
遠方に住んでいると、実家の維持管理にかかる労力が大きくなります。
例えば「空き家になってしまった実家は、月1回程度風通ししたほうがいい」と言われても、月1回飛行機や新幹線で帰省するのは大変です。
また遠方で新しい家族や仕事をもっていると、「いつか実家に戻る」という決断もしにくくなります。
遠方に住んでいて将来的にも戻る可能性が低い場合、早期の売却や処分を選ぶ人も多いと推測できます。
4位 築年数が古すぎる
- 築年数が古い(20代 男性)
- 老朽化が進み、リフォームにお金がかかるから(30代 女性)
- 築年数も経っているし、あちこちガタがきていて古くなっているので、手放すと思います(50代 女性)
4位は「築年数が古すぎる」でした。
築年数が古いと安全面に不安が出てくるうえ、修繕費もかさみます。
そのため、リフォームにお金がかかるという理由で、手放す決断をする人もいるとわかりました。
費用対効果を考えると、新たに家を買うほうがいいと判断する人もいるのですね。
5位 立地が悪い
- 田舎であるため、土地価値があまり高くない。将来譲り受けるとしても利便性が悪く、転勤族のため、定住できない(20代 女性)
- 周りに人がどんどんいなくなっている過疎地のため、将来が不安(30代 男性)
- 家の周りに日用品を買うためのスーパーがなく、歳をとってから住むのはきつい(40代 男性)
「立地が悪い」が5位となりました。
「交通アクセスが悪い」「周辺の商業施設がない」「過疎化が進んでいる」など、立地が悪いと、住もうと思いにくくなります。
すると、実家に住む人がいないという状態に繋がります。
実家に思い入れがあり精神的な葛藤があっても、実際に住むことを想定すると不便という場合には、実家を手放すことを決断する人もいるとわかりました。
6位 誰も管理できない
- 兄弟も別に家を建てており、管理が大変だから(30代 女性)
- 自分も年をとってきて、管理できる人がいなくなった場合(40代 女性)
- 老後、管理が大変(60代以上 男性)
6位は「誰も管理できない」でした。
実家を維持管理するためには、「定期的な掃除」「点検」「庭木の手入れや草むしり」などが必要です。
誰かが住んでいれば日常生活の中で行える作業ですが、「空き家」や「高齢者しか住んでいな家」の場合は管理や手入れが大変になります。
管理ができなくなると、家が傷んできたり、雑草が伸び放題になって近隣に迷惑をかけたりしてしまうことも。
管理を担える人が近くにいなかったり、高齢になって体力的な問題で管理できなくなったりしたときに、実家を手放す決断をする人も多いとわかりました。
7位 跡継ぎがいない
- 母・姉が他界して、姉の子どもたちが「相続したくない」となったら、売却すると思う(30代 女性)
- 子どもが大人になってから、持ち家はいらないと言ったとき(40代 女性)
- 継ぐ子どもがいない(60代以上 男性)
7位は「跡継ぎがいない」でした。
自分の後の世代を気にしている人もいるとわかりました。
例えば自分が実家に住まなくても、子どもが住みたいと言えば、実家を残しておく意義があります。
しかし子どもに実家を継ぐ意向がない場合には、将来的に住む人がいなくなります。
そのため、継ぐ人がいなくなるとわかった時点で、実家を手放すことを考える人もいるのですね。
実家を手放す場合の活用方法は「更地にして売却」
実家を手放すとしたらどのように活用したいかという問いには、「更地にして売却(30.2%)」と回答した人がもっとも多くなりました。
以下、2位「現状のまま売却(19.0%)」、3位「リフォームして売却(15.2%)」、4位「なんでもいいから売却(14.6%)」、5位「とりあえずは放置(9.8%)」の結果でした。
実家を手放す方法としては売却のほかに、寄付や国庫帰属などもありますが、基本的には売却したいという人が多数。
「現状のまま売却したいが、無理なら更地にして売却」という意見も多く、段階を踏んで売却活動を行いたいという意向も見えます。
1位 更地にして売却
- 土地的に海が近く、津波の心配もある場所なので、更地にして売却するのが良いと思う(30代 女性)
- 更地にして売却するのが一番。ただ解体費用が売却価格以上にかかるのであれば、放置もやむを得ないと思う(40代 男性)
- 老朽化が進んでいるため、更地にして売却(50代 男性)
1位は「更地にして売却」です。
「更地にして売却」と答えた人からは、「建物の価値があまりないから」という声が聞かれました。
建物の価値がなくなる理由としては、老朽化などがあります。
建物をなくすことで、「買い手の幅が広がる」「建物の維持管理コスト・リスクがなくなる」というメリットも。
ただし更地化にかかる費用の高さを心配している人も多く、「実際方針を決めるときには、解体費用と売却価格のバランスを見たい」という声も多くなりました。
2位 現状のまま売却
- 家も土地も現状のまま売却する(30代 女性)
- 修繕するお金がないので、現状のまま売却できるのが理想です(40代 女性)
- まずは現状で売りに出して様子見。買い手がつかない場合、不動産会社と相談して次のアクションを決めます(40代 男性)
2位は「現状のまま売却」でした。
背景には、解体などの手間・コストをかけずに売却したいという希望があります。
更地化しなくてもスムーズに売却して手放せるのであれば、解体コストもかからず楽だからです。
実際に「解体や修繕するお金がないから」という声もありました。
まずは現状のまま売り出して様子を見るなど、現状のままで売れなければ更地化なども検討する人もいます。
「理想的なのは、手間をかけず現状のまま売ること」と考えている人も多いと推測できます。
3位 リフォームして売却
- 鉄筋で頑丈なので、修繕して売却を考える(40代 女性)
- リノベして売ってもらえるような不動産会社に依頼します(40代 女性)
- 更地にするのはお金がかかるので、修繕して売却できたら良いと思います(50代 女性)
3位は「リフォームして売却」です。
リフォームして売却を選ぶ理由は、大きく2パターンありました。
ひとつは、更地化よりもコストを抑えつつ、売れやすくしたい」というもの。
もうひとつは「建物にある程度の価値や耐久性があるので、修繕だけで売れると判断した」という理由です。
ただ修繕内容が買い手のニーズと合わないと、せっかく修繕したのに敬遠されてしまうこともあります。
そのため修繕の内容も含めて、不動産会社などのプロにお任せしたいと考えている人もいました。
4位 なんでもいいから売却
- 売却。修繕するか更地にするかはわからない(30代 女性)
- 売却すると思います。修繕して売却か更地にして売却はまだ考えていませんが、あまりお金のかからない方法を検討すると思います(40代 女性)
- できるだけ早く売却する(50代 男性)
4位は「なんでもいいから売却」でした。
とにかく手放したい、売却したいという気持ちはありつつも、具体的な方向性の検討はできていない人も多いとわかります。
「早く」あるいは「できるだけお金をかけずに」といったニーズを満たしてくれる手放し方なら、方法は問わないという考え方です。
背景には、実家の処分自体が負担という気持ちがあると推測できます。
5位 とりあえずは放置
- とりあえず放置して、兄弟で相談してゆくゆくは取り壊したいと思っています(20代 男性)
- 更地にして売却は考えられないから、とりあえず空き家(40代 女性)
- とりあえずは放置しておいて、状況に応じて考えたいです(50代 女性)
「とりあえずは放置」が5位となりました。
実家を手放すことに精神的な葛藤やハードルを感じ、迷って決められない人もいます。
また兄弟姉妹や親戚がいる場合には、実家をどうするかについて自分ひとりで決められないことも多いと考えられます。
無理やり進めようとすると、トラブルになることもあるからです。
そのため、とりあえず放置して決断を先送りする人も多くなりました。
いつまでも先送りにするのではなく、「ゆくゆくは取り壊したい」など、一時的に保留するだけの人もいます。
実家を手放す際の不安は「手続きが難しそう」
実家を手放す際の不安の1位は「手続きが難しそう(26.6%)」でした。
2位「寂しい気持ちになる(14.6%)」、3位「処分コストが高くなる(14.4%)」、4位「帰る場所がなくなる(14.0%)」が続きます。
不安の要素は「手続きなどの実務面」「感情面での整理」「経済的コスト」に大別されます。
複数の不安を上げた人も多く、実家を手放す際にはさまざまな不安を抱えることがわかりました。
一方で「親が解体費用を準備してくれているので、費用面は不安がない」という意見もあり、事前の準備で不安が軽減することも見て取れます。
1位 手続きが難しそう
- 実際にある手続きのイメージがつかない(20代 女性)
- 売却手続きの仕方がわからない(30代 男性)
- 遠方なので手続きが大変なこと(40代 女性)
1位は「手続きが難しそう」です。
「実家を相続してから手放す」という一連の流れでは、「相続」「登記変更」「不動産売却あるいは寄付」などの手続きが発生します。
めったに体験することではないため知識がなく、「手続きが難しそう」「どうしたらいいかわからない」と不安になる人も多いのですね。
また「遠方に住んでいる」「兄弟が多い」などの事情があり、手続きがスムーズに進むか心配する声もありました。
手続き関連の相談先としては、不動産売却に詳しい不動産会社や、相続に詳しい弁護士・司法書士などがあります。
2位 寂しい気持ちになる
- 思い出の実家を売りたくない気持ちも強い(30代 男性)
- 思い出が詰まっているので、なくなったら悲しい(40代 女性)
2位は「寂しい気持ちになる」でした。
実家は単なる建物ではなく、思い出が詰まった場所でもあります。
そのため、実家にいい思い出があったり、家族と仲がよかったりする場合には、実家を手放すことが喪失感に結びつきやすいと推測できます。
実務的な手続きや経済的合理性とは別の部分で、不安を抱える人も多いとわかりました。
3位 処分コストが高くなる
- 家を壊したり更地にしたりするのに、いくらくらいお金がかかるのか不安を感じています(30代 女性)
- 売却するにもお金がかかるので、費用がどのくらいかかるのか(40代 女性)
- 取り壊し費用などの金銭面が心配(50代 男性)
3位は「処分コストが高くなる」です。
更地化やリフォームのあとに売却しようと考えている場合、費用への不安が出てきます。
処分にかかる費用が多すぎると、売却できても利益が出なかったりマイナスになってしまったりする可能性があるからです。
心配な費用としては、具体的には「解体費用」「リフォーム費用」「不要品の片付け費用」「相続税」などが挙げられています。
解体費用やリフォーム費用は家の状態や広さなどによって変わるため、見積もりを取って初めてわかることが多いです。
「相場がわかりにくい」「実際に自分の実家でいくらかかるのか、わかりにくい」という点が、不安を大きくしていると考えられます。
4位 帰る場所がなくなる
- たまに地元に帰りたくなるとき、帰ってこれる居場所がないのは不安(20代 女性)
- 帰省する場所がなくなることが一番不安です(30代 女性)
- 兄弟の帰省場所がなくなる(50代 男性)
4位は「帰る場所がなくなる」でした。
帰る場所がなくなることに不安を感じる理由は、大きく2パターンに分かれます。
ひとつは帰省時の拠点がなくなるという「機能の喪失」です。
実家がなくなっても管理すべきお墓などが残っている場合には、拠点がなくなるのは不便ですね。
また帰省場所がなくなり親戚や友人と集まりにくくなることで、人間関係が希薄になってしまうことへの不安もあります。
自分ではなく「兄弟姉妹」「子ども」の帰省先がなくなることを気にしている人も多くなりました。
5位 スムーズに売れるのか
- 更地にしても、田舎なので売れるかどうかが心配(30代 女性)
- 売り出してもなかなか買い手がつかないのでは?という不安(50代 男性)
「スムーズに売れるのか」が5位となりました。
とくに「田舎だから売れないかも」など、立地の悪さによって不安になる人が多数。
つまり、スムーズに売れるのかという不安には、地域格差がありそうです。
売りたいタイミングで売れないと、「現金が必要なのに、なかなか現金化できない」「固定資産税などがかかり続ける」「解体費用分のマイナスを取り戻せない」などのデメリットがあります。
対策としては「田舎の不動産に強い不動産会社を探す」などがあります。
6位 いくらで売れるのか
- 業者をきちんと選ばないと、売却金額がとても低くなるのではないかという不安(30代 女性)
- 売却する際に、適正価格で売却してもらえるのか心配です(40代 男性)
6位は「いくらで売れるのか」でした。
不動産は「需要と供給のバランス」や「家の状態」「周辺環境や開発計画」などで価格が決まるので、思ったより高く売れることもあれば、安くなってしまうこともあります。
解体や修繕など、売却準備に費用をかけたのに売却価格が安くなってしまうと、利益が出なかったり、マイナスが思ったより多くなってしまうことも。
そのため「売却額が適正か」「損をしないか」を心配する人も多くなっています。
また、仲介業者や買取業者への不信感も見られました。
7位 家族で意見がまとまらない
- 地元にいる兄弟と揉めそう(30代 女性)
- 親戚の反対に耐えられるかどうかが心配(40代 女性)
- 実弟が実家に対して強い愛着をもっているため、おそらく説得するのが大変だと思います(50代 男性)
7位は「家族で意見がまとまらない」でした。
実家の取り扱いにおいては、「売って現金化したい」「思い入れのある実家を売るなんてとんでもない」など、家族でも意見が分かれることがあります。
「歴史ある家」「親戚が年末年始やお盆に集まってくる本家」などですと、相続人以外の親戚まで口を出してくる可能性も。
トラブルを防ぐ方法としては、「被相続人が実家の取り扱いを事前に決めておく」「弁護士など第三者に介入してもらう」などがあります。
同率7位 片付けが大変
- 実家に置いているものの処分方法(30代 女性)
- 実家の荷物が多いため、まず片付けをする必要がある(30代 女性)
- 売却する前に中の荷物を処分するのが大変そう(40代 女性)
同率7位は「片付けが大変」でした。
実家を売却する前には、家の中を片付けておくのが一般的です。
家財を取り除くことで、家の状態をしっかり確認できます。
しかし長年住んだ家だと家財が多くなっていることもあり、片付けに時間と労力がかかりそうだと心配している人も多くなりました。
買取会社に売却する場合には、残置物の片付けなしで買い取ってもらえることもあります。
まとめ
実家を手放す決め手として最も多かったのは「住む人がいない」という現実的な理由でした。
住む人がいなくなる理由は、「兄弟姉妹がみんな実家を離れている」「自分は一人っ子だが、帰るつもりがない」などです。
ただし実家を手放すにあたっては、手続きの難しさのほか、寂しさなどの精神的ハードルもあります。
経済的合理性と精神面、重視するポイントが違う兄弟姉妹がいる場合には、トラブルも心配です。
アンケートを通じて、実家は単なる「建物と土地」ではなく、「思い出の場所」や「心の拠りどころ」であるからこそ、悩む人も多いのだとわかりました。