土地や建物を国に寄付できる新制度とは
土地や建物を手放したい所有者にとって、「相続土地国庫帰属制度」が新たな選択肢となります。
これは、売却が難しい不動産を国に引き取ってもらうための制度です。
背景には、管理費や固定資産税といった所有者の継続的な負担がありました。
例えば、利用予定のない山林や遠方の宅地を相続した場合、その経済的・心理的な負担は決して小さくありません。
この問題を解決するため、令和5年4月27日から新しい制度が施行されました。
この制度は、土地を手放したいと考える多くの人々の悩みに応えるものです。
ここでは、「相続土地国庫帰属制度」の具体的な内容や、どのような人が利用でき、どんな土地が対象になるのかを詳しく解説していきます。
相続土地国庫帰属制度
相続土地国庫帰属制度は、相続で受け継いだ不要な土地を、審査と一定の費用負担のもとで国に引き取ってもらうための仕組みです。
相続土地国庫帰属制度の制度が作られた背景には、土地所有に負担を感じる人が増えているという社会事情があります。
実際に、利用していない土地を保有する人のうち、約8割が何らかの負担を感じているという調査結果も出ています。
この課題に対応するため、国が土地を引き取る制度が設けられました。
制度の利用には、大きく分けて以下の3つのステップが必要です。
- 承認申請|法務局へ申請し、審査手数料(土地一筆当たり14,000円)を納付
- 要件審査|引き取り可能かどうかの審査実施
- 負担金納付|審査に通過した後、10年分の土地管理費相当額を納付
費用や審査といった条件はありますが、相続土地国庫帰属制度は管理に困った土地を手放すための、画期的な選択肢といえるでしょう。
詳しくは、法務省の「相続土地国庫帰属制度の概要」を確認してみてください。
申請できる人
相続土地国庫帰属制度の制度を利用できるのは、「相続」で土地を受け継いだ方です。
つまり、親など亡くなった方から土地を引き継いだ場合が対象となります。
自分で購入したり、生きている方から譲り受けたりした土地は、残念ながらこの制度の対象にはなりません。
あくまで、相続をきっかけに土地の管理に困っている方を助けるための仕組みだからです。
具体的には、以下のような方が申請できます。
- 土地を相続した方(親から実家の土地を相続した場合など)
- 遺言で土地をもらった方(遺言によって土地を譲り受けた場合)
- 複数人で土地を相続した方々(兄弟などで土地を共有している場合)
参照元:土地を国に引き渡せるのはどんな人?|政府広報オンライン
例えば、「何十年も前に親から相続した山林」のように、制度が始まるより昔に相続した土地でも申請は可能です。
長年、管理費や手間にお悩みだった方も、この制度を使える可能性があります。
申請の条件は「相続で土地を得たこと」が基本です。
ご自身のケースが当てはまるかどうかを確認してみましょう。
対象にならない土地
残念ながら、すべての土地が国に引き取ってもらえるわけではありません。
国の管理に大きな手間や費用がかかる土地は、対象外となってしまいます。
相続土地国庫帰属制度は、あくまで管理可能な土地を前提とした仕組みです。
そのため、申請しても受け付けてもらえない「却下要件」と、審査の過程で認められない「不承認要件」が定められています。
具体的には、以下のような土地は対象になりません。
- 建物が建っている土地
- 担保権などが設定されている土地
- 境界線がはっきりしない土地
- 土壌が汚染されている土地
- 危険な崖がある土地
- 管理が難しい樹木や竹林がある土地
- 地下に障害物(廃棄物など)がある土地
例えば、古い家が残ったままの宅地や、隣地との境界で争いがある土地は申請できません。
まずは土地の状態を正しく把握し、これらの条件に当てはまらないか確認しておきましょう。
土地や建物を国に寄付する手続きの進め方
相続土地国庫帰属制度を利用するには、正しい手順に沿って手続きを進める必要があります。
ここでは、実際に制度を利用するための具体的な手続きの流れについて、以下の4つのステップに分けて詳しく解説していきます。
- 申請前に必要な準備をする
- 申請書の提出方法
- 審査から承認までの流れ
- 所有権が移転するタイミング
何から手をつければ良いのか、どこに相談すれば良いのかといった疑問を解消し、スムーズな手続きを目指しましょう。
申請前に必要な準備をする
相続土地国庫帰属制度の申請前には、主に「土地の現況確認」と「必要書類の準備」という2つの準備が必要です。
相続土地国庫帰属制度の申請前では、国が引き取れない土地の条件が定められているため、まずはご自身の土地が対象となるかを確認する必要があります。
具体的な確認ポイントや申請に必要な書類は、以下のとおりです。
土地の現況チェックリスト | ・建物や工作物はないか(原則として更地(建物がない土地)が対象) ・権利関係はクリアか(抵当権などが設定されている土地は申請不可) ・境界は明確か |
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主な必要書類 | ・承認申請書 ・土地の位置や範囲を示す図面 ・土地の境界や形状が分かる写真 |
参照元:手続の流れ|政府広報オンライン
書類の準備は、ご自身で行うこともできますが、書類の作成や法的な判断が難しいと感じた場合は、司法書士などの専門家へ相談すると良いでしょう。
申請前の準備では、土地のセルフチェックと書類の用意が中心となります。
まずはご自身の土地の状態を把握することから始めてみましょう。
申請書の提出方法
申請書の提出先は、対象の土地がある都道府県の法務局・地方法務局(本局)です。
支局や出張所では受け付けていないため、注意しましょう。
提出方法は「窓口への持参」か「郵送」のいずれかを選択します。
窓口か郵送で申請したら、審査手数料(土地1筆あたり14,000円の収入印紙を申請書に貼り付けて納付)を納付しましょう。
参照元:手続の流れ|政府広報オンライン
例えば、遠方に住んでいるため窓口への訪問が難しい方は、郵送での提出が便利です。
ただし、書類に不備があると差し戻しになり時間がかかるため、提出前には法務省のWebサイトなどで記載内容をよく確認しておきましょう。
審査から承認までの流れ
申請書を提出すると、法務局による書類審査と実地調査が始まります。
審査に通過して初めて、国庫への帰属が承認される流れです。
審査の目的は、申請された土地が「通常の管理や処分をする上で、過大な費用や労力がかからないか」を見極めることです。
そのため、提出された書類の内容だけではなく、職員が現地に赴いて土地の状態を直接確認します。
審査から承認までの主な流れは、以下のとおりです。
- 書類審査
- 実地調査
- 承認・不承認の決定
参照元:手続の流れ|政府広報オンライン
例えば、実地調査の際に、申請内容と現地の状況が異なっていると判断された場合、承認されない可能性が高まります。
審査期間は事案によって異なりますが、一般的には半年から1年程度かかる場合もあります。
所有権が移転するタイミング
土地の所有権が国へ移るタイミングは、審査承認後に「負担金」を納付した時点です。
納付が完了して初めて、土地は正式に国のものとなります。
法務局から承認の通知を受けただけでは、まだ所有権は移転していません。
所有権移転までの流れをまとめると以下のとおりです。
- 承認通知の受け取り
- 負担金の納付
- 国庫への帰属
例えば、負担金の納付が期限に間に合わなかった場合、せっかく得た承認が無効になってしまう可能性があります。
そのため、通知を受け取ったら速やかに納付手続きを進めなければなりません。
相続土地国庫帰属制度が使えないときの5つの対処法
相続土地国庫帰属制度の審査に通らなかった場合でも、土地を手放すことを諦める必要はありません。
他にもいくつかの選択肢があるからです。
ご自身の土地の状況や条件に合わせて、別の方法を検討する必要があります。
ここでは、制度が利用できなかった場合の具体的な対処法として、以下の5つの方法を解説します。
- 土地の条件を整えて再申請を目指す
- 個人や法人への譲渡を検討する
- 他の公的・民間団体への寄付を考える
- 相続放棄を検討する(相続直後の場合)
- 訳あり不動産専門会社に売却する
一つの方法に固執せず、視野を広げて最適な解決策を見つけ出しましょう。
土地の条件を整えて再申請を目指す
一度審査に通らなかったとしても、不承認となった原因を解消すれば、再度申請可能です。
問題点を一つずつクリアにし、再申請を目指すのも一つの方法です。
法務局が土地を引き取れないと判断するには、必ず具体的な理由があります。
まずは、なぜ承認されなかったのか、その原因を把握する必要があります。
不承認理由ごとの主な対策は、以下のとおりです。
- 境界の確定(測量)
- 建物・樹木の撤去
- 抵当権の抹消手続き
例えば、土地に古い倉庫が残っていることが不承認の理由であれば、その倉庫を解体・撤去すれば、再申請の可能性が広がります。
費用はかかりますが、土地を手放せるメリットと比較して検討する価値はあるでしょう。
まずは法務局に不承認の理由を確認してみましょう。
個人や法人への譲渡を検討する
相続土地国庫帰属制度が利用できない場合でも、個人や法人に土地を譲り渡す選択肢があります。
交渉次第では、費用をかけずに土地を手放せる可能性がある方法です。
この方法の利点は、国に納める負担金がかからない点にあります。
相手が見つかれば、固定資産税や管理の手間といった継続的な負担から解放されます。
具体的に譲渡先として考えられるのは、以下のような相手です。
- 隣接する土地の所有者
- 資材置き場などを探す近隣の事業者
- 家庭菜園用地を求める個人
例えば、隣地の所有者が「もう少し土地を広げたい」と考えているかもしれません。
近所の工務店が資材を置くスペースを探している可能性もあるでしょう。
まずは身の回りから、土地を必要としている人がいないか探してみると良いでしょう。
他の公的・民間団体への寄付を考える
国以外の公的機関や民間団体へ寄付するのも一つの方法です。
あなたの土地が、特定の目的を持つ団体の活動に役立つ可能性があるからです。
すべての団体が寄付を受け付けているわけではありませんが、土地の活用方法や条件が合致すれば、引き取ってもらえる場合があります。
相続土地国庫帰属制度とは異なる基準で判断されるため、新たな可能性が生まれます。
寄付先として考えられる主な団体は、以下のとおりです。
- 地方自治体(市町村など)
- 社会福祉法人
- 認定NPO法人
例えば、自治体が公園用地や公共施設を建設する計画を持っていたり、NPO法人が自然保護活動のために山林を探していたりするケースが考えられます。
まずは、お住まいの自治体の担当窓口や、関心のある活動を行う団体に問い合わせてみると良いでしょう。
相続放棄を検討する(相続直後の場合)
相続から間もない時期であれば「相続放棄」も選択肢の一つです。
相続放棄は不要な土地だけではなく、借金などマイナスの財産も含めて一切の相続権を手放す手続きです。
相続放棄を行うと、初めから相続人ではなかったことになります。
そのため、土地の管理義務や固定資産税の支払い義務からも解放されます。
ただし、相続放棄をする場合には、以下の点に注意しましょう。
- 3か月以内の申述期限
- 全財産が放棄の対象
- 一度行うと撤回不可
例えば、不要な土地だけを放棄し、預貯金だけを受け取るといったことはできません。
プラスの財産とマイナスの財産をすべて天秤にかけ、判断しなければなりません。
相続放棄は強力な手段ですが、厳しい制約も伴います。
利用を検討する際は、必ず弁護士や司法書士などの専門家に相談しましょう。
相続放棄の詳しい手続きの流れや、申述期限を過ぎてしまった場合の対処法などについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

訳あり不動産専門会社に売却する
どうしても土地を手放せない場合、訳あり不動産を専門に扱う会社への売却も検討しましょう。
訳あり不動産を専門に取り扱う会社は、一般的な市場では買い手がつかないような土地でも、買い取ってくれる可能性があります。
専門業者は、買い取った土地を商品化するための独自のノウハウを持っています。
そのため、個人間の取引や寄付が難しい土地でも、売却できる可能性も高くなるでしょう。
売却が成立すれば、継続的に発生する管理の負担から解放されます。
一般的に買い手がつきにくいとされる、以下のような売却の可能性があります。
- 再建築ができない土地
- 境界が確定していない土地
- 共有持分のみの不動産
もちろん、売却価格は市場相場よりも低くなる傾向にあります。
しかし、費用をかけて問題を解決する手間を省き、現状のままで土地を手放せる点は大きな利点と言えるでしょう。
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例えば、国に寄付する制度は便利ですが、すべての土地が対象となるわけではなく、条件を満たさない場合は承認されないリスクもあります。
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まとめ
土地や建物を国に寄付できる新制度として創設された「相続土地国庫帰属制度」は、相続した不要な土地の管理や処分に悩む方にとって、有力な解決策の一つです。
所有権を国に引き渡せる制度ですが、土地の状態や境界の明確さ、管理状況などの厳しい審査基準があり、申請が却下されるケースもあります。
申請準備や書類作成、審査期間、負担金の納付など一定の手間と費用が伴う点にも注意が必要です。
このようなリスクを避けてスムーズに土地を手放す方法として、「不動産の売却」が現実的な選択肢になります。
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