住んでいる地域で地震被害の不安を感じたことがある人は78.6%

全国の男女500人に「住んでいる地域で地震被害の不安を感じたことがあるか」を聞いたところ、「ある」と答えた人が78.6%にのぼりました。
日本は地震の多い国なので、多くの人が日常的に居住エリアで地震への不安を抱えている様子がうかがえます。
空き家が地震被害のリスクに影響すると感じる人は90.8%

「空き家が地震被害のリスクに影響すると感じるか」という問いには、「影響する」と回答した人が、「とても(34.8%)」「やや(56.0%)」を合わせて9割を超えました。
多くの人が「空き家は防災面でリスクになる」と考えていることがわかります。
一般的に空き家は劣化が進みやすく、耐震性に不安があります。
また持ち主が近くにいないことも多いため、対応が遅れてしまうことも不安の理由になっていると考えられます。
空き家の地震リスクで不安に感じることは「建物が倒壊する」

「空き家の地震リスクで不安に感じること」の1位は「建物が倒壊する(52.6%)」、2位は「火災が起きる(44.4%)」でした。
3位「空き家が道路を塞ぐ(31.6%)」が続きます。
空き家の倒壊や火災に不安を抱えている人が多数。
近くにある空き家が地震によって倒壊したり、火災を起こしたりすることで、自宅や自身・家族への被害が懸念されるからです。
また「避難・救援経路となる道路を塞ぐ」「災害後に放置される」といった意見もあり、空き家の存在が、被災後の生活に影響することも懸念されているとわかりました。
1位 建物が倒壊する
- 空き家が崩れて、他の建物を壊す危険がある(30代 男性)
- 管理者がいなくて放置されている傷んだ家が、前に住んでいた家の近所にありました。少し大きな地震が発生したときに崩れないか、心配していました(30代 男性)
- 家屋の倒壊による瓦礫の飛散。瓦礫による怪我や物損など(40代 女性)
1位は「建物が倒壊する」でした。
定期的に管理されていない空き家は、湿気などが溜まることで劣化のスピードが早まり、傷みやすくなります。
そのため管理不足で脆くなった空き家が、地震で倒壊してしまうのではないかと不安に思っている人も多くなりました。
建物が倒壊すると、近くを歩いていて倒壊に巻き込まれ、怪我をする可能性があります。
また空き家が他の建物と隣接している場合には、他の建物に被害をもたらすのではないかという懸念もあります。
2位 火災が起きる
- ガス配管等が劣化して、火災のきっかけになりうること(30代 男性)
- 火災が心配。火の気はなさそうだが、他からの火災をもらったら一気に炎上して危険だと思う(40代 女性)
- 燃えやすい灯油や木材などが放置してあった場合、火が広がる可能性(50代以上 女性)
2位は「火災が起きる」でした。
所有者以外が空き家の内部を確認するのは難しい面があります。
空き家の中に、可燃物や「ガスや電気が通っていて、さらに劣化している配管」などがあるかどうかは、なかなか確認できません。
そのため、火災が広がりやすい状況の空き家だったら怖いという不安を抱えている人も多くなりました。
住宅密集地では火災が周辺へと波及する恐れも大きく、空き家発の火災や空き家による延焼促進の懸念が大きいとわかります。
3位 空き家が道路を塞ぐ
- 崩れてしまって避難するにあたっての進路妨害になり、周辺に住んでいる人が素早く避難できないのではという不安を感じます(10代 女性)
- 倒壊し、避難する際の妨げになること(40代 女性)
- 建物の崩壊で、消防車などが進入できなくなる恐れがある(50代以上 男性)
3位は「空き家が道路を塞ぐ」でした。
災害時、地域の道路は避難経路や救援経路となります。
空き家が倒壊して道路を塞いでしまうと、逃げ道を塞いだり、緊急車両の到着が遅れてしまったりします。
倒壊によって直接怪我をしたり命を奪われたりすることがなくても、災害後に命を守る行動が遅れてしまう可能性があるのですね。
空き家が倒壊することで、災害時の救援・復旧活動が事前シミュレーション通りに進まないという懸念が浮き彫りになりました。
4位 災害後に放置される
- 空き家がつぶれたり道路に瓦礫が散ったりしたときに、片付ける人がいないこと(40代 女性)
- 管理者が不在または不明なことで、復旧作業時の確認に余分な手間がかかって、周辺にも作業の遅れなどの影響が出ること(40代 男性)
- 災害後に片付けがされない(50代以上 女性)
「災害後に放置される」が4位でした。
住んでいる人がいる家は、災害で被害を受けた後に住人が片付けや補修などを行います。
一方で所有者が遠方にいたり所有者が不明だったりする空き家の場合には、「片付けや補修がされないまま放置されてしまうのでは」という不安を抱く人も多いとわかりました。
被災したまま放置されてしまうと、余震で崩れたり、周囲の景観が悪化してしまったりする可能性も。
また「空き家が隣家に被害を与えたときの補償がされないまま、手続きが放置されるのでは」という不安も寄せられています。
5位 治安悪化につながる
- 地震で家をなくした人が、空き家に勝手に住み着く(20代 男性)
- 地震後のどさくさにまぎれた不法侵入による、治安の悪化(40代 女性)
- 被災後の避難所として違法に利用されるなど、治安上のリスクもあると思います(40代 女性)
「治安悪化につながる」が5位に入りました。
災害による混乱時に、空き家が悪用されるのではないかという不安も寄せられています。
とくに多かったのは「家を失った人などが、空き家に勝手に住み着く」などの不法侵入への懸念で、他に「放火される」なども挙がりました。
地震発生時に置いて、空き家は倒壊や火災などで物理的に危険なだけでなく、治安悪化という社会的な不安も引き起こすことがわかります。
空き家の地震対策で有効だと思うことは「適切な管理を行う」

「空き家の地震対策で有効だと思うこと」を聞いたところ、1位は「適切な管理を行う(45.2%)」です。
2位「行政が介入する(34.6%)」、3位「空き家を解体する(22.6%)」と答えた人も多くなっています。
空き家の地震対策としては、大きく分けて「建物を残したまま対策する方法」と「建物をなくしてしまう方法」があります。
「建物をなくすのが理想。けれどすぐには難しいだろうから、せめて管理はきちんとしてほしい」という声も多数。
「理想の状態になるのは難しくても、できる範囲で対策を」という意識が見える結果となっています。
1位 適切な管理を行う
- 所有者または所有者が委託して調査する人がいれば、定期的なチェックができる(20代 女性)
- 所有者は、町内会にお金を払って建物のチェックをしてもらう(30代 男性)
- 所有者が定期的に点検・補修を行い、倒壊のリスクを減らすことが大切だと思います。耐震診断や補強工事を行うほか、瓦やガラスが落ちにくいように固定する工夫も必要です(50代以上 女性)
1位は「適切な管理を行う」でした。
適切な管理によって、空き家の老朽化や設備故障を防ぎ、倒壊や火災のリスクを減らすために有効であると期待できます。
基本的には所有者にチェックやメンテナンスをしてほしいという声が多くなりました。
ただ「所有者が管理できないなら、業者や地域住民の協力を得て管理してほしい」という声も。
誰がやるかにはこだわらず、何らかの形で定期的に手入れがされている状態を保つことが大切だと考える人が多くなりました。
2位 行政が介入する
- 空き家に対する自治体のチェック。一定以上の安全が保たれなければ、所有者への呼び掛け。応じない場合は強制的な手段をとる(20代 男性)
- 相続の際に、空き家の所有権を国か地方自治体に移管できるようしてほしいです。有効活用できる立地のよい空き家もありそうだから、うまく活用してほしい(40代 女性)
- 自治体が所有者を常に把握し、管理をするよう促すこと。所有者がわからない場合は、国・自治体が対応できるように法整備をすること(50代以上 女性)
2位は「行政が介入する」でした。
空き家の地震対策は、個人で対応するのが難しい面もあります。
例えば周辺住民がボロボロの空き家を見て不安を抱いていても、所有者や連絡先がわからないと対策のしようがありません。
そのため国や自治体など、行政による介入を望む人も多くなりました。
具体的には「行政による見回りや安全性チェック」「所有者への指導」「強制的な解体」「空き家に関する相談の受付」などが挙げられています。
直接的に介入するのではなく、空き家解体に補助金を出すなど、空き家の所有者が地震対策するための環境整備を求める声も多くなりました。
3位 空き家を解体する
- 空き家の迅速な撤去作業(20代 男性)
- 老朽化がひどいなら、すぐに解体工事をする(40代 女性)
- 将来的に誰も居住する見込みがないなら解体、撤去(50代以上 女性)
3位は「空き家を解体する」でした。
空き家を解体することは、地震による空き家の倒壊や火災・延焼を防ぐための、根本的な対策です。
とくに利用予定がない空き家や、老朽化が進んでいる空き家に対しては、解体してほしいという声が多くなっています。
4位 耐震対策を施す
- 所有者が定期的に耐震検査を行ってほしい(20代 女性)
- 所有者による耐震補強(30代 女性)
- 持ち主が耐震チェックを行い、耐震基準を満たす。倒壊により二次被害を起こさないような手段を講じる(50代以上 男性)
「耐震対策を施す」が4位でした。
空き家を残す際には、耐震対策を施してほしいと考えている人も多くなりました。
具体的には「耐震チェック」「耐震補強」「改築やリフォーム」などが挙げられています。
古くて耐震性能の低い空き家を安全に残しておくためには、定期的なチェックや自力でのメンテナンスだけでは足りず、大掛かりな耐震対策が必要になることもあります。
5位 空き家を有効活用する
- 空き家のリノベなどをして有効に利用する(10代 男性)
- 安く提供して住む人を見つけ、「空き家」という状態をやめる(30代 女性)
- うまく住む人を見つけるシステムがあると良い(40代 男性)
「空き家を有効活用する」が5位に入りました。
建物を残しつつ、空き家の状態にはしておかないことを求める人もいました。
例えば賃貸物件として貸し出したり、地域のコミュニティセンターや店舗として使ったりする方法が挙げられています。
日常的に人が出入りすることで、点検や清掃が行われて、劣化スピードが遅くなり、異常に気づきやすくなるのがメリットです。
空き家バンクがより活発に利用されることなど、空き家を有効活用しやすくなるシステムづくりに言及した人もいました。
6位 空き家を売却する
- リノベーションをして、売る(20代 女性)
- 解体が無理であれば、売るなどの対応をしてほしい(30代 女性)
- リフォームで耐震補強をした後、販売(40代 女性)
6位は「空き家を売却する」でした。
所有者が空き家を解体するには費用がかかり、賃貸物件として貸し出すにも所有者としての管理の手間はかかります。
そのため、空き家を売却するという方法が挙げた人もいました。
売ってしまえば所有者自身の負担はなくなり、買った人は住むなり貸すなり、何かしら空き家を活用するはずです。
売却することで、空き家が放置されるリスクを解消できます。
7位 家の片付けをする
- 燃えやすい物などは置いておかない(20代 女性)
- ベランダや庭の整備に一定の基準を設けること。ベランダに物を置かない、可燃物は適切に処理して、置いておかないなど(20代 女性)
- 月1回くらいは所有者が建物をチェックし、物を整理整頓すること。ゴミが多いと火災になりやすいと聞いたことがあるので(30代 女性)
「家の片付けをする」が7位です。
空き家の中から可燃物や重い物をなくすことで、地震時の火災や倒壊を防ぎやすくなります。
「耐震リフォームをする」「業者に頼んで専門的な設備の点検をする」といった方法よりも、比較的取り組みやすい方法です。
外から見える部分がきちんと片付いていることで、「空き家だけれど手入れはされている」という印象になり、近隣住民の不安も少なくなると考えられます。
まとめ
今回の調査からは、地震時の空き家に対する不安の多くが「倒壊」「火災」「避難経路の妨げ」など、空き家による直接的な被害となっていました。
手入れされていない空き家は、倒壊や火災の危険性があり、近隣住民に防災上の不安を与えています。
さらに、災害後の放置や治安悪化など、災害後も空き家の影響が残ると考える人も多くなりました。
空き家の地震リスクを低減するためにはまず所有者による対策が重要です。
ただ実際には所有者が対処できず放置されている空き家も多いことから、行政の介入を求める人も多くなりました。
行政には「空き家を処分しやすくする環境づくり」「空き家のリスクを低減させるための、強制力をもった介入」などが求められています。







