なぜ古民家活用に補助金制度があるのか
古民家活用に補助金制度が存在する背景には、社会的課題である空き家問題の解消や、地域資源としての古民家の保存と活用を促進する目的があります。
古民家は歴史的価値や文化的意義を持ちながらも、耐震性や設備の老朽化といった課題があるため、改修工事や維持管理には高額な費用が必要です。
補助金制度は、これらの負担を軽減し、所有者が積極的に古民家を再生する動機づけとなっています。
日本で深刻化している空き家問題の背景
日本では、人口減少や都市部への移住が進む中で、地方を中心に空き家の数が増加しています。
総務省の「住宅・土地統計調査」によると、空き家の件数、空き家率ともに増加が続いています。
| 調査年 | 2003年 | 2013年 | 2023年 |
|---|---|---|---|
| 空き家件数 | 659万戸 | 820万戸 | 900万戸 |
| 空き家率 | 12.2% | 13.5% | 13.8% |
空き家は防犯上の問題や景観の悪化、地域活性化の阻害要因となるため、国や自治体が対策に乗り出しています。
古民家もこの問題の一環として注目され、適切な改修を促進する補助金制度が導入されています。
古民家の保存・再生の必要性と社会的意義
古民家は、地域の歴史や文化を後世に伝える重要な建築物です。
その保存・再生には、地域コミュニティの活性化や観光資源としての価値向上といった社会的意義があります。
また、古民家の再利用は新築に比べて環境負荷が低く、サステナブルな社会の構築にも寄与します。
このような意義を踏まえ、多くの自治体では保存活動を支援する補助金制度を設けています。
例えば、兵庫県養父（やぶ）市には、古民家を維持しながら改修する費用を補助する「養父市古民家再生促進支援事業補助金」制度を行っています。
築50年以上で、伝統的木造建築技術により建てられた住宅の改修費に一定の補助金を交付する制度です。
参照元：養父市
しかし、古民家が居住地や職場から離れたところにあり、管理や活用が難しいケースもあると思います。
そんな時には、売却の検討もおすすめです。
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古民家再生に活用できる補助金の種類
古民家再生には、様々な補助金制度が活用可能です。
それぞれの補助金には対象となる改修工事や条件が定められており、適切に利用することで大きな費用負担を軽減できます。
この章では、具体的な補助金の種類と特徴を解説します。
① バリアフリーリフォーム補助金
バリアフリーリフォーム補助金は、高齢者や障害者が安全に生活できる環境を整備するための補助金です。
まず、介護保険を活用した補助金について解説します。
要介護と認定を受けた人が安全に過ごすための自宅を改修する必要がある時、その費用に補助金が支給されます。
支給限度基準額は20万円で、最大18万円が支給されます。
こちらの補助金は、改修工事前に相談し、申請を行う必要があります。
ケアマネージャーに相談後、改修工事前に自治体へ申請書類を提出しないと補助金を受けられないため、注意が必要です。
また、自治体独自の補助金制度を行なっているところもあります。
例えば、広島県広島市では、住宅改修費の補助を最大60万円まで補助する制度があります。
この制度には所得制限があり「生計中心者の市民税所得割額が9万円以下の世帯の人」などの条件が設けられています。
参照元：広島市
自治体独自の補助金は、条件や金額などはさまざまです。お住まいの自治体の制度を確認しましょう。
② 耐震リフォーム補助金
耐震リフォーム補助金は、地震に備えた建物の耐震性向上を目的としています。
古民家は築年数が長いため、耐震性能に問題があるケースが多く、この補助金を活用することで安心安全な住まいを確保できます。
耐震リフォーム補助金は、お住まいの自治体によって制度が異なります。
例えば、福島県では「木造住宅等耐震化支援事業」にて、昭和５６年５月３１日以前に着工した、3階建て以下の木造住宅への耐震診断や耐震化工事への補助金を支給しています。
- 耐震診断費用：15.6万円/戸
- 耐震化工事：耐震改修工事費の4/5かつ最大60万円（多雪地域は72万円）
参照元：福島県
改修工事前に、自治体の窓口で申請を出し、補助金の交付決定通知を受け取ってから契約をする必要があるため、事前の準備が重要です。
③ 省エネリフォーム補助金
省エネリフォーム補助金は、住宅の断熱性能やエネルギー効率を高める改修工事に適用されます。
窓の二重ガラス化や断熱材の設置、エコキュートなどの省エネ設備の導入が対象です。
光熱費の削減だけでなく、環境保全にも寄与する制度として注目されています。
省エネリフォーム補助金の一例として、断熱窓への改修を促進する補助金「先進的窓リノベ2025事業」を紹介します。窓を高性能な断熱窓へ改修する場合、費用の1/2相当が住宅所有者に補助されます。
参照元：経済産業省
これらの制度を活用するには、事前に条件を確認し、必要な申請手続きを行うことが重要です。
④ 地方自治体独自の補助金
自治体によっては、地域の課題に応じた独自の補助金を用意しています。
例えば、島根県安来市には「安来市空き家改修事業補助金」制度があります。
-
- 安来市の空き家バンクに登録された物件に3年以上居住する場合
- 改修にかかる経費の1/2を補助
- 限度額は空き家に住む人の状況によって異なる（U・Iターン者は限度額100万円、市内在住者は限度額50万円）
参照元：安来市
自治体のホームページで詳細を確認し、対象となる条件を満たすか確認しましょう。
⑤ 古民家解体費用の補助金
老朽化が進み、再生が困難な古民家の場合、解体費用の補助金が利用できる場合があります。
例えば、東京都墨田区の「老朽危険家屋除却費等助成制度」は危険と判断された家を解体する時に、経費の1/2を補助します。
補助金の限度額は50万円（無接道敷地にある家の場合は100万円）です。
参照元：墨田区
さまざまな補助金がありますが、改修費用は基本的に自分でお金を用意しなければいけません。
古民家にお金をかけずに対応したい場合は、売却もおすすめです。
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古民家活用に関する減税制度
古民家を改修する際には、補助金だけでなく減税制度も利用できます。
所得税控除や固定資産税の減額など、活用次第で大幅に税負担を軽減できる制度が充実しています。
この章では、古民家活用時に活用可能な減税制度について詳しく解説します。
リフォームで受けられる所得税控除
リフォームを行う際には、所得税控除を受けられる場合があります。
リフォームに関する所得税控除の一例を紹介します。
それぞれの所得税控除には、条件や必要な書類が定められています。
リフォームを依頼した会社と確認しながら、翌年の確定申告に向けて準備を進めましょう。
耐震リフォーム減税
耐震リフォーム減税は、古民家の耐震性能を向上させる工事に適用されます。特に地震の多い日本では重要な制度です。
工事費用の10%が所得税から控除されます。控除の上限額は25万円です。
控除を受けるためには、改修前の古民家が現行の耐震基準に適合していないことが条件です。
参照元：住宅リフォーム推進協議会
事前に耐震診断を受け、適合する工事内容であるかを確認しましょう。
省エネリフォーム減税
省エネリフォーム減税は、下記の断熱改修工事や、太陽光発電などの設置工事が対象となります。
- 窓の断熱改修（必須）
- 床、天井、壁などの断熱改修
- 太陽光発電設備の設置
- 高効率空調機設置工事
この制度では、リフォーム工事にかかった費用の一定割合が控除されます。
この限度額を超える部分の額は5％の控除率の適用を受けることができます。（※省エネ改修工事と併せて太陽光発電設備設置工事を行う場合）
参照元：住宅リフォーム推進協議会
快適な断熱性や光熱費の改善を目指す方は活用をおすすめします。
バリアフリーリフォーム減税
バリアフリーリフォーム減税は、手すりの設置や段差の解消といった工事に対して適用されます。
高齢者や障害者が安心して暮らせる住環境を整える取り組みに対して税の優遇措置が設けられています。
控除対象となるのは、工事費用からバリアフリー補助金を差し引いて、50万円以上の金額が残る場合です。
参照元：住宅リフォーム推進協議会
同居対応リフォーム減税
親世帯との同居を目的としたリフォーム工事も控除対象となります。
以下の設備を増設し、工事費用からバリアフリー補助金を差し引いて、50万円以上の金額が残る場合が対象となります。
-
- 調理室
- 浴室
- 便所
- 玄関
※増設後、いずれか２以上の室が複数あること（調理室2室＆浴室2室など）
参照元：住宅リフォーム推進協議会
家族のニーズに合わせた改修工事を行うことで、快適な同居環境を実現できるうえ、税負担も軽減されます。
固定資産税の減額制度
古民家をリフォームした場合、固定資産税が減額される制度を利用できる場合があります。
リフォームの工事内容に応じて、一定期間税負担が軽減されるため、費用負担を抑える重要な方法です。
固定資産税の減額申請は、工事完了から3ヶ月以内に、自治体の担当窓口にて行います。
耐震、省エネ、バリアフリーリフォームのいずれかを行なった場合の、固定資産税の減額の概要を紹介します。
| リフォームの種類 | 適用期間 | 固定資産税の減額 | 費用要件 |
|---|---|---|---|
| 耐震 | 翌年度（１年度分） | 家屋分の1/2 | 50万円超 （補助金を引いた額） |
| 省エネ | 翌年度（１年度分） | 家屋分の1/3 | 60万円超 （補助金を引いた額） |
| バリアフリー | 翌年度（１年度分） | 家屋分の1/3 | 50万円超 （補助金を引いた額） |
参照元：国土交通省
申請に関する書類は、自治体によって異なる場合があります。あらかじめ詳しい要件や必要を確認し、準備しましょう。
さまざまな減税制度で負担はある程度減るものの、古民家の改修には自分でお金を用意しなければいけません。
古民家に自分で住む予定がない場合は、売却もおすすめです。
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古民家再生・解体にかかる費用の相場
古民家再生の費用は、改修内容や規模によって異なります。
ここでは、具体的な費用内訳と、どの部分にコストがかかるのかを説明します。
リフォーム・リノベーションの費用内訳
古民家リフォーム・リノベーションにかかる金額の目安を紹介します。
| リフォームの種類 | 金額目安 |
|---|---|
| 耐震補強 | 約25～150万円 |
| 断熱材の設置 | 約4千～3万円／㎡ |
| 屋根 | 約15～260万円 |
| 外壁 | 約50～350万円 |
| 水回り（トイレ） | 約20～50万円 |
古民家の状態、リフォームで使いたい材料、依頼するリフォーム会社によって金額は大きく変わってきます。
契約後、実際にリフォームをする中で古民家の状態が分かり、追加工事の出費がかさむ場合もあります。
参照元：リショップナビ
リフォームの優先順位をつけて、前もって計画を立てることが大切です。
古民家解体費用の目安
再生が難しい古民家は、解体をしなければいけませんが、解体にも費用がかかります。
| 建物構造 | 1坪あたりの費用 |
|---|---|
| 木造 | 40,000円 |
| 鉄骨造 | 60,000円 |
| 鉄筋コンクリート造 | 70,000円 |
| 浄化槽 | 50～80万円（1個あたり） |
たとえば、40坪の木造建築を解体する費用の目安は160万円となりますが、空き家が建っている立地や解体する季節によって料金は変動し、空き家の中に荷物が残っている場合は追加料金がかかります。
補助金を活用できる場合もあるため、解体を検討する際には自治体の制度を確認しましょう。
古民家を再生する、解体する、どちらの場合でも費用や手間はかかります。
費用をかけずに古民家を手放したい場合は、売却がおすすめです。
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古民家を「建て替え」ではなく「再生」するメリット
古民家再生は、建て替えと比較して経済的・環境的に優れた選択肢です。
古民家に使用されている木材は、現在では入手が難しい高強度なものが多いです。
このような素材を活用することで、新築以上の耐久性を持つ住まいが実現します。
また、自然素材を使った古民家は、住む人の健康に配慮した建築物と言えます。
古民家活用の成功事例
古民家活用の成功事例を紹介します。
実際の成功事例を見ると、古民家活用の魅力がより明確になります。
築115年の京町家再生プロジェクト
京都府京都市の「ANJIN Gion Shirakawa」は1日1組限定のラグジュアリーな宿泊施設です。築115年の町家を再生し、宿泊施設として活用しています。
柱や梁をそのまま残しながらも最新の設備を導入し、観光客に人気の高い施設となりました。
参照元：アキサポ
初期費用0円で実現したリノベーション事例
不動産会社とリース契約を結び、古民家をリノベーションした後に賃貸物件として運営する「フリーノベーション」という方法もあります。
東京都中野区のシェアハウス「KURAカフェ中野新橋」は、フリーノベーションを活用して間取りや水回りなどを全体的に改修。落ち着いた雰囲気のシェアハウスになりました。
参照元：ココミンカ
古民家の活用は魅力がありますが、立地や活用プランを考えて運営していかなければいけません。
運営が難しそうな場合は、売却もおすすめです。
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補助金を使っての古民家の活用に迷った時は売却がおすすめ
補助金や減税を使っても、古民家を改修して活用できるようになるまでは出費がかかります。
古民家の活用に迷った場合、売却を検討するのも一つの手段です。
古民家は購入希望者にとって魅力的な資産となることが多く、売却で思わぬ収益を生む可能性もあります。
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まとめ
この記事では、古民家の活用における補助金制度について詳しく解説しました。
日本で深刻化する空き家問題の解決策として、古民家の再生が重要視されており、バリアフリーや耐震、省エネリフォームといった補助金が利用可能です。
また、地方自治体独自の支援や減税制度も活用すれば、費用負担を大きく軽減できます。
さらに、改修に古民家の素材を活用すると、環境や健康に配慮した建物になるというメリットもあります。
迷った際には、売却という選択肢も視野に入れることで、新たな可能性を見つけられるでしょう。
古民家活用の第一歩を、ぜひ踏み出してみてください。
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